立場変更シリーズ:
〜もしが金鰲側だったら?〜
*
「聞太師〜! はい、頼まれてた書類です」
「…か。ご苦労」
「いえいえ。…あ、聞太師。私これから紂王陛下のトコ呼ばれてるんですが、何か言伝とかありますか?」
「……、お前…今回は何の名目で陛下に呼ばれたのだ…」
「え? えっと確か…何か貴重な冠を…って、あ、聞太師には言っちゃダメって言われてたんだった…!」
「な、何っ!? 冠だと!?
…ならん! それがどういう意味なのか分かっているのか!?」
「え、いや…只の装飾が珍しい冠としか聞いてないんですが…」
「…、それはおそらく、王が正式な妃を決める儀式で使う物だ。いくら陛下のご好意であっても、妃になる訳でもないお前が見せて頂くべき物ではない。
溜まっている仕事も山のように在るのだ。陛下には申し訳ないが、私から断っておこう。お前は張奎の書類整理を手伝いに行け」
「そ、そーですか…? 分かりました」
すたすたすた。
ぱたん。
「紂王陛下…まだを妃にするのを諦められておられなかったか……!!」
こんこん。
きいぃぃっっ…
「聞仲様、張奎からの書類です……あら? どうかされましたか?」
「…高蘭英……。いや、済まない。手間をかけたな」
「いえいえ。それはそうと…のことですか?」
「!!」
「紂王陛下は相変わらずにご執心ですからねぇ…」
「……」
「昔ならともかく、今はももう結婚できる歳ですし。はっきり言って心配なのでしょう?」
「……う、うむ…」
「昔といえば、は小さい頃『おおきくなったら飛虎おじちゃんのお嫁さんになる』とか言っていましたね……」
「いや、ならん! それはならん!! 第一飛虎には賈氏がいるだろう!」
「…聞仲様、もう十年以上前の話ですよ」
「………」
「むしろ、今心配するとすれば四聖の方でしょう」
「…ハッ、あいつらになんぞ、あのじゃじゃ馬が馴らせる訳が無いな」
「あら、そういえば、は次の休みには九竜島に呼ばれているとか何とか……」
「何っ!? いやしかし……あいつは最近マトモに休んでいない…流石に休みを取り消すわけには行かん……黒麒麟を見張りにつけるか…」
「……ぶ、聞仲様…。これでははおちおち嫁にも行けませんね…。
ところで、それならば聞仲様は誰ならば宜しいのですか?」
「ふむ……」
「………」
「うむ………」
「………」
「………」
「………聞仲様?」
「…どうしても誰か決めろと言うのであれば、今の所、この私以外に任せられる者など居ないな」
「………」