――ほら、あーたはいっつもそうやって、俺っちの前を行く。
時折振り返って、さり気なく手を差し伸べながら。




「…充電完了?」

「洞府まで競争ーっ!!」

「任せて!」

「…まだまだ負けてらんないから!!」

「これは、私達の出番かな?」





「…ずるいさよ、は」


「ん? 何か言った??」
「……へ? 別に何も言ってねぇさよ?」
「…ま、いいけどさ。…ほら天化、皆待ってるから、そろそろ行くよ?」
「ん、すぐ行くさ」


…ほら、また。


自覚は無ぇんだろうけど。
十年も一緒に居りゃ、ほとんど無意識的で日常的なモンなんだろーけど。


俺っちの感情の動きを、一番良く分かってるヒト。
多分、コーチよりも。

それでいて、一番、直接何かを言わないヒト。
今だって、俺っちの白々しい誤魔化しに、敢えて突っ込んでくることはしなかった。


…本当は、手に取るように、分かってる癖に。


今だって、スースたちの方に歩きながらも、意識はここに向いてる。
そんな事に気が付いたのは、いつのことだっけか…。


顔を上げて、もう一度見てみる。

まだ距離はそう離れていないのに、遠くて、でも近くて。
徐々に小さくなる後姿が大きく見えて、でも俺っちより小さいのに変わりはなくて。


…何だか今までに無く、むかついた。


自分に?
それとも、あーたに?

…そんなの、どっちだって良いさ。


とりあえず、立ち止まってないで動き出そう。

歩いてちゃ駄目だ。
本気で、走って。








追い掛けて、追いついて いつか追い越せるように