「雲ちゃーん」
「…」
「ねぇ雲ちゃん」
「……」
「…雲ちゃんってば! 雲ちゃん雲ちゃん雲ちゃん雲ちゃん!! 聞こえてんでしょー!?」
「……うるさいねぇ、さっきから。珍しい……」
「…珍しいのはそっちだよ。こんなに呼んでても返事しないなんてさー…今まで無かったから…つい」
「こんなにって、どのくらい呼んでたんだい?」
「かれこれ5分程真正面から呼びかけていましたけど」
「…で、今日は何の用だい?」
「話逸らしたわね…。てか雲ちゃんが呼んだんでしょー?」
「そうだったっけ? ……まぁいいや」
「はー…。まぁいいけど…。てか何してたの?それ。さっきからシャッター切るわけでもなく…」
「シャッターは切りたくても切れないのさ。覗いて見るだけ」
「え? 何で?」
「さぁ…。研究者っていうのは、そういう一見無意味な事をするものだよ」
「……ふーん…?」
006.フィルムのないカメラ
「(今日は、なかなか面白いモノが見れたねぇ……)」
――レンズ越しに見た君は相変わらず眩しくて、どこか新鮮。
「(…で、結局…何の用で呼んだんだったかなぁ…?)」
★あとがき