「痛っ…!」

「…太乙? どーかした?」

「え、いや、何でもないよ!」

「何でもなくないでしょー? 今ちっちゃく「痛っ!」って聞こえたし!!」

「あ、いや、大したことじゃないから何でもないって言ったんだけど…」

「…ホントにー?」

「…ちょっ、何その目つきっ!! お父さん、そんな風に育てた覚えは無いんだけど!?」

「うわー…何かさぁ…私の目つき云々より、その言い方の方が酷くない…?」

「え、違っ…!! うちの娘はもの凄く美人で良い子に育ったよ!? 悪い虫が付かないかいっつも心配してるんだよ!?」

「太乙ー、落ち着いてー。矛盾してきたよー」

「…はぁ」

「ちょっ、何その溜息っ!? 私何か悪い事した!?」

「…してないしてない。私が一人で取り乱してただけ。もう落ち着いた」

「何なのよ…。まーったく、相変わらず………って太乙、唇から血出てる! あーもーやっぱ何でもなくなかったー! ちょっと待ってて!」

ぱたぱたぱた…








005.けたマグカップ








「(…だって、原因言ったら、君はコレを使う事を許さなくなるだろう?)」


――たとえ危なくても、これだけは譲れない。君からの最初の贈り物だから。


「(あぁ…でもこれで5回目か…。角度さえ気をつければ、こんなに怪我しないはずなのになぁ…)」


あとがき