「…楊ゼン、居る〜?」

「あれ、珍しいね。どうかしたのかい?」

「や、特に用事って言う用事は無いんだけど…忙しかった?」

「いや、大丈夫だよ。とりあえず、そんな所で立っていないで入ったらどうだい?」

「…そう? それじゃお邪魔しまーす」

すたすたすた。
…ころんっ。



「………」

「………っはぁ〜…!」



「…キミは今回もそのソファーに転がる為だけに来たのかい…?」

「あはは…。だって居心地良いんだもん、ここ」

「……それは、寝心地、じゃなくて?」

「……んー…」

「………まぁ、ゆっくりしていきなよ。キミの事だから、やるべき事は全部しっかり終わらせてから来たんだろう?」

「まぁね〜…。ありがと楊ゼン」








010.何も言えない








「(…ちょっと意地悪しちゃったかな? 今更あんな事聞くなんて…)」


――彼女がここにやってくるのは、いつだって少し元気が無い時と決まっているのに。


「(…いつまで経っても核心を突けない臆病な自分が悪いのにね……)」


あとがき