今日は修行が早めに終わったから、とある浮岩まで散歩に出る。
リズム良く浮岩を跳んでいたら、後ろに感じた一つの気配。








*ナタクの場合*








「…ねぇナタク」
「ム!?」
「…バレバレよ、そんな気ぃ張ってたら…;;」


スタッ、と手近な浮岩に着地して振り返る。
まぁ、用件の予想はつくけどさ…。


「…昨日したばっかじゃない」
「昨日は昨日だ!! 今からオレと戦え!! 今日こそ倒す!!」


言うなり乾坤圏をぶっぱなすナタク。
…私、今、煽鉾華持ってないのに……!


――仕方ないから、避けながら散歩を続けることにする。
今までよりは、スピードを上げて。


「…ちょろちょろ逃げるな!! 真面目に戦え!!」
「んなコト言われても宝貝持ってないしっ!」


それでもなお追ってくるナタク。
全く、ホントに負けず嫌いなんだからー!!!
…こうなったら、その性格…利用させて貰うわよ?


目的地のひとつ前の浮岩で立ち止まる。
突然立ち止まった私に、ナタクもつい空中で急停止。

また騒ぎ出す前に、この腕白坊主を説得しなきゃね…。


「…ナタクは、本気で戦いたいのよね? 私、今日はもう修行してきたから疲れてるんだけど」
「ムゥ………」
「疲れてる私と手合わせして勝っても、ナタクはすっきりしないでしょ?」
「………チッ…」


よしっ!! 説得成功!!
でも、せっかくここまで来たんだし…


「ねーナタク、代わりにいいトコ教えてあげる!!」
「ム??」


頭に疑問符を浮かべるナタクを無理やり連れて、今日の目的地へ。
周りより少し広いその浮岩は、私のお気に入りの場所。


「ほら!! ここの蜜柑、美味しいんだよ!」
「……」


近くの木からもぎ取って差し出すと、無言ながらも受け取るナタク。
私が腰を下ろして食べ始めると、ナタクも横で私に倣う。


「どう?」
「………美味い…」


…やっぱ素直よね、この子は。
戦いにしても何にしても、凄く真っ直ぐで。

私も、ナタクを見てると、初心を思い出すというか…。


…もっと頑張らなきゃ、って思えるんだよ。


「…ありがとね」
「…??」
「いーよ、気にしなくても」




――ありがとう、って、その一言。
たまには改めて言うのもいいでしょ?


あなたに出会えて良かった。
これからも、宜しくね!