洞府の近くの、少し小さな浮岩にて。
只今、手合わせ後の休憩中。
*天化の場合*
「…ねぇ天化」
「何さ?」
「今までの試合成績って、覚えてる?」
「…今日のも入れて、丁度500戦。…あーたが262勝で勝ち越してるさ」
「…よくもそんな細かく…」
「そりゃそーさ」
ふんっ、ってちょっと溜息ついて、軽く視線を逸らして言う天化。
分かってるよ、その負けず嫌いな性格は。
実際、私もそうだから。
この洞府の専売特許かな??
…ううん、元々そういう素質はあったんだろうけど。
「でも天化、強くなったよねー…50勝位は差ぁついてる筈だったのに…だいぶ縮まっちゃってる」
「そーさ? まだまだこれからさ! いつか俺っちが勝ち越すかんね!」
あ、強気な事言ってる割に、顔緩んでるよ、天化。
…誉めたから?
それって、私のこと認めてくれてるって事かな…。
――今更、言うまでもない…か。
じゃなきゃ、この負けず嫌いが、何年も女に負け続けて黙ってるワケ無いし。
でも、確かに今更だけど……なんかちょっと嬉しい。
「…期待してるよ? そう来なきゃ張り合いないもんね!!」
「お、言ったさね? そのうち背中土につかせてやるさ!」
今回は、完全に2人とも笑ってる。
なんか、兄弟弟子っていいよね…。
弟弟子、って言っても同い年だけど。
それが逆に、弟だったり兄だったり、姉だったり妹だったりって、時と場合によって変われるのがイイ。
常に上だと疲れるから。
…私は、いつでも対等に見てるつもりだけど。
でも…天化が弟弟子で良かったな。
――今日、唐突に、そんな事を思った。
「…ありがとね」
「どーしたさ? 急に」
「別に、何でもないさ!」
「…マネすんなよ」
「「っくくっ…」」
ほら、また二人とも、笑顔になれた。
――ありがとう、って、その一言。
たまには改めて言うのもいいでしょ?
あなたに出会えて良かった。
これからも、宜しくね!